必修問題
 看護師国家試験必修問題出題基準は、看護師としてとくに基本的かつ重要な知識およ
び技能について、専門基礎分野および専門分野から以下の内容で構成した。
 はじめに、看護の社会的側面および倫理的側面の基本的な理解を問うこととした。た
とえば医療・看護制度、インフォームドコンセントと患者・障害者の自己決定、医療事
故などや、看護師の法的責任および患者・障害者の人権擁護等の責務に関する項目を含
んだ。
 次に、看護の対象者および看護活動の場に関する項目として、看護の対象者につい
て、個人、家族の特性に関する基礎的な知識を問うこととした。たとえば、健康段階、
発達段階、心理過程および社会的影響等についての基本的な理解に関する項目を含ん
だ。また、看護活動の場に関する項目では、病院、施設および在宅等の看護活動が展開
される場とその特性についての知識や、関係職種との連携等についての基本的な理解を
問う内容とした。
 さらに、看護に必要な人体の構造と機能および健康障害と回復についての基礎的知識
に関する項目として、看護に必要な、解剖・生理、代表的(高頻度)な病態のメカニズ
ム、生命の危機への対応、臨床でよく遭遇する症状の病態とその対応に関する知識や、
疾病の予防および健康の維持・増進についての基本的な理解を問う内容をあげた。
 最後に、看護技術についての基礎的な知識に関する項目として、患者・障害者の自立
支援、あるいは安全・安楽を促進する日常生活援助技術や、診療の補助に伴う看護技術
および人間関係を発展させる技術に関する基礎的な知識を問う項目をあげた。ここに
は、当該技術を選択する根拠および原理・原則に関する項目も含まれる。
【必修問題】
 T.看護の社会的側面および倫理的側面に関する基礎的知識を問う。
大項目 中項目 小項目
1.健康に関する指標 A.人口の動向 a)総人口
b)年齢別人口
c)労働人口
d)将来推計人口
e)世帯数
B.人口動態 a)出生の動向
b)死亡の動向
c)死因の概要
C.健康状態と受療状況 a)平均余命
b)有訴者の状況
c)受療率
d)入院期間
2.健康と生活 A.生活習慣 a)食事・栄養
b)睡眠
c)運動
d)飲酒
e)喫煙
B.労働 a)職業性疾病
b)母性保護と両立支援
3.保健医療制度の基本 A.医療保険制度 a)医療保険の種類
b)国民皆保険
c)国民医療費
B.介護保険制度 a)保険者
b)被保険者
c)給付の内容
4.看護の倫理 A.基本的人権の擁護 a)個人の尊厳
b)患者の権利
c)自己決定権
d)インフォームドコンセント
e)ノーマライゼーション
5.保健師助産師看護師法 A.看護職員の業務と義務 a)保健師助産師看護師の業務
b)看護師に禁止されている業務
c)守秘義務
d)業務従事者届
B.看護職員 a)養成制度
b)就業状況
 U.看護の対象者および看護活動の場に関する基礎的知識を問う。
大項目 中項目 小項目
1.人間の特性 A.人間と欲求 a)基本的欲求
b)社会的欲求
B.患者の特性 a)QOL<クオリティ・オブ・ライフ>
b)患者ニーズ
c)健康に対する意識
d)疾病に対する意識
e)疾病・障害の受容過程
2.人間の成長と発達 A.胎児期 a)形態的発達
B.新生児期・乳児期 a)発達の原則
b)身体の発育
c)運動能力の発達
d)栄養
e)母子関係
C.幼児期 a)身体の発育
b)運動能力の発達
c)排泄の自立
d)言語発達
e)社会性の発達
D.学童期 a)運動能力・体力の特徴
b)社会性の発達
E.思春期 a)二次性徴
b)アイデンティティの確立
F.成人期 a)社会的責任と役割
b)生殖機能の成熟と衰退
G.老年期 a)運動能力・体力の変化
b)知覚・感覚の変化
c)認知能力の変化
d)心理社会的変化
3.患者と家族 A.家族の機能 a)家族関係
b)疾病が患者・家族に与える心理社会的影響エイキョウ
4.おもな看護活動展開の場と看護の機能 A.医療施設 a)病院
b)診療所
c)助産所
d)老人保健施設
B.保健所・市町村保健センターにおける看護活動 a)保健所の業務
b)保健センターの業務
C.在宅看護 a)訪問看護ステーションの事業
b)継続看護
D.関連職種との連携 a)関連する職種
b)チーム医療
c)看護の役割
 V.看護に必要な人体の構造と機能および健康障害と回復についての基礎的知識を問う。
大項目 中項目 小項目
1.生命活動 A.人体の構造と機能 a)血液
b)ホメオスタシス
c)体温
d)感染防御と免疫反応
e)循環器
f)呼吸器
g)神経細胞と情報伝達
h)消化器
i)泌尿器
j)代謝
k)骨・筋
l)性と生殖
B.正常な妊娠・分娩・産褥 a)妊娠の経過
b)分娩の経過
c)産褥の経過
C.人間の死 a)死の三徴候
b)脳死
2.病態と看護 A.症状と看護 a)発熱
b)脱水
c)黄疸
d)喀痰,血痰,喀血
e)チアノーゼ
f)呼吸困難
g)胸痛
h)不整脈
i)血圧上昇,低下
j)腹痛
k)嘔吐
l)下痢
m)便秘
n)乏尿,無尿,頻尿
o)浮腫
p)貧血
q)不安
r)ショック
3.主要疾患と看護 A.生活習慣病 a)がん
b)虚血性心疾患
c)高血圧症
d)脳血管疾患
e)糖尿病
B.感染症 a)インフルエンザ
b)多剤耐性ブドウ球菌感染症
c)腸管出血性大腸炎
d)ウイルス性肝炎
e)結核
f)HIV感染症/AIDS
C.外傷 a)骨折
b)創傷の治癒過程
c)外傷性ショック
D.精神疾患 a)うつ
b)統合失調症
E.小児疾患 a)気管支喘息
b)小児感染症
c)乳幼児突然死症候群
4.薬物治療に伴う反応 A.おもな薬物の作用と副作用 a)抗菌薬
b)抗がん薬
c)強心薬・抗不整脈薬
d)狭心症治療薬
e)降圧薬・昇圧薬
f)副腎皮質ステロイド薬
g)糖尿病治療薬
h)麻薬
B.医薬品の安全対策 a)混合の可否
b)禁忌
c)保存方法
 W.看護技術の基礎的知識を問う。
大項目 中項目 小項目
1.基本技術 A.コミュニケーション a)言語的コミュニケーション
b)非言語的コミュニケーション
B.バイタルサイン a)観察と測定
C.看護過程 a)情報収集
b)アセスメント
c)計画立案
d)実施
e)評価
2.日常生活援助技術 A.食事 a)食事の環境
b)食事介助の方法
c)誤嚥の予防
B.排泄 a)床上排泄
b)導尿
c)浣腸
d)摘便
e)失禁のケア
f)ストマ造設患者のケア
C.清潔 a)入浴の介助
b)清拭
c)口腔ケア
d)洗髪
e)部分浴
f)陰部洗浄
g)整容
h)寝衣交換
D.活動・休息 a)睡眠
b)移動・移送
c)廃用性症候群の予防
d)褥瘡の予防
E.ボディメカニクス a)体位
b)体位変換の基本
3.患者の安全・安楽を守る技術 A.療養環境 a)ベッド
b)病室環境
B.医療安全対策 a)転倒・転落の防止
b)誤薬の防止
c)患者誤認の防止
C.院内感染防止対策 a)スタンダードプリコーション<標準予防ヨボウサク
b)手洗いの方法
c)無菌操作
d)滅菌と消毒の方法
e)針刺し・切創の防止
f)感染性廃棄物の取り扱い
4.診療に伴う看護技術 A.栄養補給 a)胃管挿入
b)経管栄養法
c)経静脈栄養法
B.薬物療法 a)与薬方法
b)吸収・分布・代謝・排泄の機序
C.輸液管理 a)刺入部位の観察
b)滴下速度
c)輸液ポンプの取り扱い
d)安全・安楽
D.採血 a)使用物品
b)穿刺部位
c)手技
E.罨法 a)罨法の種類と適応
b)温罨法の方法
c)冷罨法の方法
F.酸素吸入 a)酸素吸入時の原則
b)酸素ボンベの取り扱い
c)酸素流量計の取り扱い
d)鼻腔カニューラ
e)マスク
G.吸引 a)口腔・鼻腔吸引
b)気管内吸引
c)体位ドレナージ
H.救急救命処置 a)気道の確保
b)人工呼吸
c)心マッサージ
d)止血
e)体温の保持
人体の構造と機能
 専門基礎分野の「人体の構造と機能」は、看護の対象である人間の身体について学ぶ
ものである。看護学では、日常生活行動が人間の生命活動につながる営みであり、対象
者の日常生活行動を援助することは、すなわち生命維持にかかわることであるという認
識に立って人体を理解する必要がある。この点から日常生活行動と生命活動のつながり
と、人体が日常生活行動をどのようなしくみで行っているかを問う内容を組み入れた。
 人体は皮膚と膜によりおおわれ、外界と区別された個体である。体内では血液を媒体
にして、血管という流通路によって、細胞1つひとつに栄養や酸素を行きわたらせ、細
胞はそれを使ってその細胞固有の機能を果たし、産成物や不要物を血液中に排出してい
る。細胞の集合体である人体は、細胞の活動が保たれていることによって生きており、
細胞の活動を保つために、細胞を取り巻く内部環境を一定範囲内に保つ種々の調整機構
が備えられている。しかしながら内部環境の恒常性は、個体の調節機構のみによっては
保つことはできず、外部環境との物質交換が必須である。すなわち外部環境から栄養、
酸素を取り入れ、不要な代謝産物を外界に排出し、内部環境を保っているのである。こ
れらの外部環境とのやりとりは、息をすることや食事をすることなどの日常生活行動で
ある。また日常生活行動には、個体の維持のほか遺伝子情報の維持に関する生殖も含ま
れる。
この視点に立って、大項目では、まず細胞の生命活動、それを支える防御機構、物流
機構、調節機構を取り上げている。次いで生活行動に共通して必要な運動機能、個々の
生活行動として呼吸、栄養摂取、排泄、性と生殖をどのような構造と機能によってなし
とげているかで構成した。中項目と小項目とでは、従来から取り上げられている人体の
構造と機能に関する用語を使用しているが、これらは大項目に示した看護の専門性に即
した理解を前提としている。
「人体の構造と機能」の項目は、「疾病の成り立ちと回復の促進」や専門科目における
援助技術等の学習の基礎知識となるものである。
【人体の構造と機能】
 ◎目標1:日常生活を営むうえで、人体がどのような構造をもち機能しているかについ
      ての理解を問う。
 ◎目標2:疾病によって人体が受ける構造と機能の変化を学習する土台となる正常な人
           体についての理解を問う。
大項目 中項目 小項目
1.生命 A.細胞 a)細胞の構造
b)遺伝情報
B.エネルギー代謝 a)同化作用と異化作用
b)酵素
C.内部環境の恒常性 a)体液
b)体液の電解質
c)体液の酸塩基平衡
d)体温
D.生体のリズム a)睡眠と覚醒
E.人体をおおう皮膚と膜 a)皮膚の構造と機能
b)漿膜・粘膜
2.血液 A.血液の成分と機能 a)血液のはたらき
b)血液の物理化学的特性
c)血液の成分
d)造血
B.止血機構 a)凝固と線溶
C.血液型 a)ABO型およびRh式
3.生体の防御機構 A.非特異的生体防御機構 a)生体表面での防御機構
b)食細胞とサイトカイン
c)胸腺・脾臓・リンパ節
B.特異的生体防御反応 a)免疫系の細胞
(免疫系) b)抗原
  c)液性免疫
  d)細胞性免疫
4.循環系 A.心臓 a)心臓と心筋の構造
b)心臓の機能
c)刺激伝導系
B.血管系 a)肺循環と体循環
b)動脈系と静脈系
c)脈拍
d)血圧
e)胎児の血液循環
C.リンパ系 a)リンパ管
5.神経性調節 A.神経組織 a)神経細胞と情報伝達
b)神経膠細胞
B.中枢神経系の構造と機能 a)大脳
b)間脳
c)脳幹
d)小脳
e)脊髄
f)中枢神経系を保護する組織
C.末梢神経系 a)脳神経
b)脊髄神経と神経叢
c)体性神経系
d)自律神経系
6.感覚と認識 A.視覚 a)目の構造
b)視覚の伝導路と認識
c)眼球運動
d)眼球に関する反射
B.聴覚と平衡覚 a)耳の構造
b)平衡覚
c)聴覚
C.嗅覚と味覚 a)嗅覚受容器の構造と嗅覚
b)味覚受容器の構造と味覚
D.皮膚感覚 a)皮膚の感覚受容器
b)皮膚感覚の種類
E.内部情報の処理 a)内部情報の受容体と認識
7.液性調節 A.ホルモンの種類 a)ホルモンの化学的性質と作用機序
(内分泌系) B.ホルモン分泌の調節 a)調節ホルモン・拮抗ホルモン
  b)フィードバック機構
  C.内分泌器官の構造とホルモンの機能 a)視床下部
  b)下垂体
  c)甲状腺
  d)上皮小体<副甲状腺>
  e)膵島
  f)中枢神経系を保護する組織
  g)副腎髄質
  h)消化管ホルモン
  i)腎臓のホルモン
  j)性腺ホルモン
8.運動系 A.姿勢 a)体位と構え
B.骨格 a)骨の構造と機能
b)体の支柱
c)四肢の骨
d)頭蓋骨と胸郭
C.骨格筋 a)骨格筋の構造
b)筋収縮の機構
c)抗重力筋
d)四肢の筋
e)頸部の筋
f)表情筋
g)呼吸筋
h)骨盤底筋
D.運動 a)関節の構造
b)関節運動の種類
c)随意運動と不随意運動
d)脊髄反射
9.呼吸の機構 A.換気と発声 a)鼻腔の構造と機能
b)咽頭・喉頭の構造と機能
c)気管・肺の構造と機能
d)呼吸運動
e)肺気量
f)声帯と発声
B.ガス交換 a)外呼吸と内呼吸
b)ガス分圧
C.ガスの運搬 a)酸素サンソの運搬
b)二酸化炭素の運搬
D.呼吸調節 a)呼吸中枢
b)呼吸に影響を与える因子
10.栄養摂取の機構 A.食欲 a)血糖と食欲の中枢
B.咀嚼 a)歯・口腔の構造と機能
b)咀嚼の過程
C.嚥下 a)咽頭の構造と機能
b)食道の構造と機能
c)嚥下の過程
D.消化と吸収 a)胃の構造と機能
b)十二指腸の構造と機能
c)空腸・回腸の構造と機能
d)結腸の構造と機能
e)肝臓と胆道の構造と機能
f)膵臓の構造と機能
E.代謝 a)栄養所要量
b)基礎代謝
c)炭水化物の代謝
d)脂肪の代謝
e)タンパク質の代謝
f)核酸の代謝
g)ビタミン・ミネラル
11.排泄の機構 A.尿の生成 a)腎臓の構造
b)濾過
c)再吸収
d)分泌
B.細胞外液の調節 a)抗利尿ホルモンの作用
b)レニン−アンジオテンシン−アルドステロン系
C.排尿 a)膀胱の構造と神経支配
b)尿道の構造と神経支配
D.排便 a)直腸・肛門の構造と神経支配
12.性と生殖に関する機構 A.女性の生殖系 a)女性生殖器の構造
b)性周期
c)妊娠・分娩・産褥
B.男性の生殖系 a)男性生殖器の構造
b)精子の形成
疾病の成り立ちと回復の促進
 専門基礎分野の「疾病の成り立ちと回復の促進」は、疾病をもつ人々への個別な看護
を展開するために必要となる専門的な基礎知識を問う。これらの基礎知識は、疾病を現
象的・分析的に理解したうえで人間を生活者として全人的にみつめ、疾病からの回復を
促進させる看護の専門性を理解するうえで重要である。
 以上の考えから「疾病の成り立ちと回復の促進」は、全体を3つに区分した。目標1
では「疾病の成り立ち」を理解し、「疾病の成り立ち」についての看護学的視点を定め
た。目標2では「疾病の構造」をみつめる看護の視点を医療との関連で整理し、目標3
では疾病についての膨大な医学的知識を「生存・生活機能別疾病と生活調整」として、
看護の方向性を見いだしやすくするように編成した。各目標では大項目と中項目におい
て、看護の専門性を示し、小項目にはこれまで問われてきた医学的専門基礎知識の大綱
を位置づけた。とくに、目標3での「生存・生活の障害をもたらす疾病の種類」の大項
目は、疾病の種類を生活の調節との関連で6項目に整理した。第1に中枢神経機能の障
害をあげたのは、人間の生存・生活が個体の内外からの刺激に応答することを軸に営ま
れているからである。疾病を予防し、回復を促進する生活調整の視点として、中枢神経
および感覚器の障害に分けて小項目を整理した。第2は個体の生命に直結する機能障害
として、生存に不可欠な酸素を取り入れ、必要な物質を全身に運ぶ役割を担う呼吸、循
環および造血機能の障害に整理し、死が避けられない病態の理解につながるようにし
た。第3は生命体を維持するために必要な食と排泄に関する機能障害を、第4に個体差
の大きい内部環境調節にかかわる機能障害を、第5は日常生活行動を支える運動機能の
障害を、第6はかぎりある個体の生命が遺伝子を介して連続していく生殖機能に関する
障害をとりあげてまとめた。
【疾病の成り立ちと回復の促進】
 ◎目標1:生活との関連において健康から疾病に至る変化のプロセスについての理解を
      う。
大項目 中項目 小項目
1.疾病の成り立ち A.生体の反応と疾病の機序 a)疾病を引きおこす内的・外的誘因
b)疾病を引きおこす生活習慣
c)病態が日常生活に及ぼす影響
d)異常状態の発現
e)バイタルサインの変化
B.生体の回復力 a)ホメオスタシス
b)回復力に影響する局所的・全身的因子
c)回復力に影響する心理社会的因子
d)生活環境調整
C.個体差と個人の反応 a)疾病およびその症状に対する反応
b)疾病による生活への影響に対する反応